村田靖夫設計の「樹と簀子のコートハウス」を訪ねてきました。
竣工は1990年ですから 実に竣工から23年と言う歳月が流れています。
靖夫は中庭のある住宅 いわゆる「コートハウス」の設計を得意としていましたが
この住宅は彼の「コートハウス」の原点というべき明快なつくられかたをしています。
それは合理的で無駄の無い平面や 中庭と室内の窓まわりのデザインに顕著にあらわれています。
昨年から「緑」をテーマにした本を製作しています。
靖夫が設計した住宅と私が設計した住宅をいくつかとりあげます。
「樹と簀子のコートハウス」もそのうちのひとつ。
どの住宅も新たに撮影をしましたが この住宅だけは
「竣工当時と中の使い方がまったく変わってしまったから・・・」
という理由で建て主から撮影を断られました。
建て主のご意向なのでそれはやむを得ません。
(本では竣工時の写真でご紹介します)
訪れたのは 一度ご挨拶したかったことと やはり一度は見ておきたいから。
「どれほど変わってしまったのか」と心配していましたが それはまったくの杞憂に終わりました。
さすがに内装の経年変化は見られましたが とてもきれいにお住まいのご様子。
どうやら撮影を遠慮された理由は 家をとても大事にされているがゆえのようでした。
中庭の樹木は大きく育ち 反面 枯れてしまった木もあったり
年月を経て少しずつ変化したり傷んだりする様子を見せるのは忍びない と思われたのかも知れません。
でも 実際はそんなことはありません。
地震で傷んだ道路側の格子(下の写真)や木部の塗装に手を入れた外観は 竣工時とほとんど変わりません。
大事に手を入れて住み続けていただくご様子を見ることは われわれ設計者にとってとてもうれしいことであります。
訪れてよかった。
本は順調に進めば6月頃には書店に並ぶ予定です。
お楽しみに。